時効を援用する方法
1 法律上は時効の援用の方法は決められていません
債務整理の場面においては、返済の滞納をしてから長期間が経過した結果、残った債務について消滅時効が完成しているということがあります。
ただし、消滅時効の期間が経過しただけでは債務はなくならず、時効の「援用」をしてはじめて債務が消滅します。
時効の援用とは、債務者が債権者に対し、時効完成により支払い義務がない旨を伝えることです。
実は、法律上、時効の援用の方法について明確な形式は定められていません。
極論をすれば、口頭で伝えるだけでも消滅時効の援用は成立します。
しかし、実務においては、後日トラブルが発生することを防止するため、消滅時効の援用をした事実を、客観的に証明できるようにしておくことが求められます。
2 実務における消滅時効の援用方法
実務においては、配達証明付きの内容証明郵便を用いて、消滅時効の援用を行うのが一般的です。
これにより、消滅時効を援用する旨を記載した書面が、債権者の元に届いたことを、第三者である郵便局が証明できるようになります。
消滅時効を援用する旨を記載する際には、対象となる債権(債務者の方からみた債務)を、契約番号や契約日時などで特定します。
債権回収会社に債権譲渡がなされていた場合には、原債権者や債権譲渡日も記載することが多いです。
そのうえで、債権者が権利を行使できることを知った日(一般的には、期限の利益喪失日)から5年以上(一部の債務については、10年以上)が経過している旨、および消滅時効を援用する旨を記載します。
3 消滅時効の援用に関する条文
消滅時効の援用については、民法第145条および同法第166条に定められています。
民法第145条によれば、1で述べましたとおり、時効の援用の方法は限定されておらず、かつ時効は援用してはじめて債務消滅の効果が発生することになります。
【参考条文】
第百四十五条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
(第2項以下略)
参考リンク:e-Gov法令検索(民法)・第第百四十五条